SEESAW SPECTACLES

2024/07/27 20:00


SEESAW SPECTACLESのオーナー石川明が、ゲストを迎えて対話を行う「SEESAW TALK」。 一般誌から、専門誌まで幅広く活躍する眼鏡ライターの伊藤美玲さんをお招きし、互いの印象から当店の感想、眼鏡選びのこだわりまで伺いました。


石川:今回初めてSEESAW SPECTACLESに来店された印象はいかがでしたか?


伊藤:まず、この学芸大学という立地がすごくいいなって思いました。渋谷までバスで行けるくらい近いのに、そことは異なる文化圏が存在している感覚があって。少しのんびりしつつも、意識や感度が高い人が多い。そういう方たちにとって、近所にメンテナンスや調整までしてもらえる専門性の高いショップがあるのはとてもいいですよね。ここはじっくり一人ひとりと対峙して提案されるスタイルだと思うので、人々のムードとも相性がいい気がします。


石川:まさにそういったコミュニケーションを実現するためにこの街を選んだ経緯があります。商業エリアでやろうと思うと、どうしてもいろんなお客さんがたくさんきてしまって、一人ひとりと向き合う時間が少なくなってしまうし、密度も薄くなってしまう。伊藤さんがおっしゃるように、学芸大学は感度の高い方が多くいらっしゃるので、店としてやりたいことが伝わりやすいエリアなのかなとも思います。

伊藤:入ってみて感じたのが外光がたくさん入ること。眼鏡の色を見る、カラーレンズを確認する、視界を確認するという点でも重要ですよね。


石川:自然光が入るというのは僕の中でも重要なキーワードでした。反対に、窓ガラスのない店など風通しの悪い空間は、気持ちが悪くて長時間れないんです。だから、必然的に抜け感があって、気持ちのいい場所というのを第一条件として選びました。


伊藤:あとは、眼鏡の陳列の仕方も他とは違いますね。セレクトショップでは、ブランド区切りで並べるところが多いのですが、ここではブランドにこだわらず、形やテイストごとに並んでいるので、もっと直感的に眼鏡選びを楽しめるような気がします。


石川:個人的にある程度歳を重ねてくると、そんなにブランドにこだわらなくなってくるのかなと思っていて。それよりはもっとフラットに眼鏡を見てもらいたいんです。だからこそ意図的にブランドのカテゴライズを外して、お客様が持っている自分にとっての理想のイメージを具現化してもらうことが大事なのかなと思っています。


伊藤:アパレルのセレクトショップだとそうですよね。カジュアルだったり、オフィスでも着られるようなものだったりと、テイストによってラックが分かれているから、用途によって選びやすい。そういう感覚で眼鏡選びを促してくれるお店って素敵だなと思います。あとはとにかく空間に対して鏡が大きい!よく眼鏡を選ぶときは全身鏡で見て下さいと原稿にも書いているのですが、ここではもう見ざるを得ないというか、わざわざ移動しなくても顔を上げるだけで全身が映るのでいいですよね。外の景色も映り込むので、日常生活で使う自分の姿を客観視できるのかなと感じました。

石川:眼鏡屋さんでは、商品がよく見えるように壁面に陳列していることが一般的なので、ちょうどいい場所に鏡がないことが多いですよね。元美容師というバックボーンもあるかもしれませんが、僕にとっては鏡で自分に似合うかどうかを確認できることってとても重要だと思っていて、できるだけ眼鏡が映り込まないように配置したりと、背景にも気を遣っています。


伊藤:だから全体的にすっきりとしていて、外の抜け感が気持ちよく鏡に映るんですね。


石川:背景に眼鏡がずらっと入ってくると、眼鏡屋さんにいる感じが強くなってしまうと思うんですよね。店頭に並んでいるデモレンズは反射が強いので、必要以上にキラキラしてしまいますし、個人的にそういう要素が緊張感を作っているんじゃないかなって思うんです。あとは、外光が入って広い鏡があることで、単純に空間が明るくなります。


伊藤:私は普段からサングラスとかを試すときに、外光の入らない店の場合は、「外で見てきていいですか?」と聞いてから外に出させてもらっています。でも、店内でこれだけ光が入るならそれもしなくていいからありがたいですよね。


石川:店側としては、やっぱりお客様がかけている姿を同じ目線で鏡越しに確認したいんですよ。でも、小さな鏡しか置いていないと、お客様のパーソナルスペースに入らないといけない。それが僕自身あまり気持ちよくないというか、不快に感じられるんじゃないかなと思っていて。大きい鏡なら斜め45°からさっと確認できるので、提案もしやすいんです。


伊藤:鏡越しのコミュニケーションというのも美容師さんならではの視点かもしれないですね。


石川:そうですね。当時の経験から向き合うよりも鏡越しで話すほうが良い距離感が保てる気がします。来店されるお客様のほとんどは、気になっている眼鏡が自分に似合うか似合わないかの答え合わせに来ていると思っていて、サッカーで例えるならばゴールが大きいほうがシュートは決まりやすい。その点で鏡はその人にとってのゴールを映すものなので、なるべく大きいほうがいいと思っています。


伊藤:ちなみに、陳列棚の下にも商品が入っているんですか?


石川:はい。あそこはサイズごとに分けて入れています。基本的にうちでは、「ESCHR (イシュー)」という独自の理論をもとにお客様にあったサイズを提案しているんです。


伊藤:サイズごとに似合うものを提案するというスタイルは新しいですよね。


石川:多くのお客様は、丸眼鏡が欲しいとか太めのセルフレームが欲しいといったイメージを持っていらっしゃるんですよね。でも、漠然と大量の眼鏡の中から自分に似合う一本を探すよりも、自分のサイズでフィルタリングをしてから選んだほうが、意外とストレスなく答えに近づける。

伊藤:最初からあまりにもたくさんの眼鏡を前にすると分かんなくなってしまうという方は多いですよね。慣れてくると眼鏡から呼ばれるというか、サイズを見なくても感覚的に分かってきたりもするのですが。


石川:きっとそうですよね。その一方で、サイズをきちんと測定して、似合うものを知ることによって、ご自身では苦手だと思っていたフレームが意外といけるっていうパターンも多いんですよ。


伊藤:自分のサイズがあるブランドを知ると、新作がより楽しみになるし、それもまたいいですよね。逆に、伊達眼鏡の場合は、そのサイズの概念を外してファッションとして遊んでみたり。


石川:それはおしゃれ上級者ですね。


伊藤:おしゃれを楽しむためにも基本を知らないと外しもできないと思うので、自分にあったサイズを知るということはいいことだと思います。サイズの表記は以前からボクシングシステムという、世界共通のものがあるのですが、まだまだその存在すら知らないユーザーの方も多いので。


石川:そうですね。でも、ロジックを細かく知って欲しいというよりは、あくまで選ぶときの目印として、サイズを認識してもらえたらいいなと思います。自分のサイズを知ることで “見る” 機能もしっかりと備えられるので、安心して使えるものをもっと直感的に選んで欲しいですね。


伊藤:コンセプトショップというポジションがありますが、その多くはブランドのラインナップなどに重きをおいていて、SEESAW SPECTACLESのようにサイズという明確なコンセプトがあるのは新鮮に感じました。


石川:今からほかと同じことをしても差別化できないですしね。うちでは「サイズを軸に、メガネを遊ぶ。」をコンセプトとしてホームページにも打ち出していて、サイズというルールを新たに定義することで、お客様それぞれの楽しみ方が広がってくれたらと思っています。



次回は、可視化できないものに価値を感じる二人の話をお届けします。


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SEESAW TALK with Mirei Ito vol.1 メガネへの価値観
SEESAW TALK with Mirei Ito vol.2 SEESAW SPECTACLESの印象
SEESAW TALK with Mirei Ito vol.3 メガネの魅力と見えない価値
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プロフィール

伊藤美玲(いとう みれい)

「眼鏡で、きれいになる」をライフワークに、眼鏡の専門誌「MODE OPTIQUE」や「文春オンライン」、「Forbs JAPAN」、「CREA WEB」など幅広いWEBメディアを中心に記事やコラムを執筆している。

Instagram: @eyewear_note

文:市谷未希子

写真:猪原悠